コインゲームの考察 〜偏った賞金〜
前回の記事で扱ったコインゲームについて考察してみましょう.なぜ無限大だったはずの賞金が有限という制約を加えただけでたったの16円になってしまったのでしょうか.
まず賞金が10億円に達することなく支払われる確率を求めましょう.すると
\[
\sum_{n=1}^{30}2^{-n}=1-2^{-30}=1-1/10\text{億}
\]
\sum_{n=1}^{30}2^{-n}=1-2^{-30}=1-1/10\text{億}
\]
となります.つまり起こりうる全事象のうちたった10億分の1を除いてしまうだけで無限大が16円になってしますのです.もっとわかりやすく言えば,ほぼ起こり得ない事象が期待値のほとんどの部分を占めているということになります.
宝くじの「期待」値 〜現実的な数値を求めて〜
では前置きはこれくらいにして本題の年末ジャンボについて考察していきます.
勘の鋭い読者の皆さんならお気づきかもしれませんが,宝くじはこのコインゲームと非常に似た性質を持っています.それは「ほとんど起きない事象に莫大な賞金が掛けられている」ということです.
そこで宝くじの「期待」値を求めるのにコインゲームで使ったトリック「有限の制約」を加えてみましょう.ただ,宝くじの場合はすでに有限なので,「賞金が最ももらえる事象と最ももらえない事象の上位をごく僅か除いて期待値を計算する」ことで対応します.
宝くじの(理論上の)期待値は販売額の約半分になります.実際に今年の年末ジャンボの期待値を計算すると149.975円になります.これは当せん金付証票法という法律で,期待値は半分以下でなければいけないと定められているかららしいです.
宝くじを1枚買う場合の「期待」値
今年の年末ジャンボの1等は賞金額が7億円で当たる確率は0.2億分の1で,前後賞は賞金額1.5億円で当たる確率は0.1億分の1です.1等と前後賞が当たる確率は皆無に近いので,「有限の制約」から除外します.1等と前後賞で得られる賞金が占める期待値は\[
7/0.2+1.5/0.1=50
\]
となります.全体の期待値150円のうちおよそ3分の1が1等と前後賞によるものだということです.この結果から次のような結論を得ます.
年末ジャンボの期待値は150円だが,実質的には100円しか「期待」できない
(おまけ)宝くじを(ランダムに)複数枚買う場合
では複数枚買った時は上の議論が適用できるのでしょうか.その答えは「買う枚数」と「除外する事象の割合」によります.今回は「除外する事象の割合」を定数$p$として,買う枚数$n$が何枚の時まで上の議論が適用できるか考えてみます.
宝くじを1枚買う時,1等または前後賞が当たる確率$p_0$は
\[
p_0=1/(0.2 \text{億})+1/(0.1 \text{億})=15/(1\text{億})\simeq 1/(667\text{万})
\]
p_0=1/(0.2 \text{億})+1/(0.1 \text{億})=15/(1\text{億})\simeq 1/(667\text{万})
\]
となります.上の議論が適用されるのは1等または前後賞が1回でも当たる確率が$p$以下になる時です.数式で表すと,$p_0\ll 1$であることから
\[
p>1-(1-p_0)^n\simeq 1-(1-np_0)=np_0
\]
となります.ここで「除外する事象の割合」を100万分の1(=2等が当たる確率)としましょう.すると上の式から7枚以上買わないときは上の議論が適用できることがわかります.
\[
p>1-(1-p_0)^n\simeq 1-(1-np_0)=np_0
\]
となります.ここで「除外する事象の割合」を100万分の1(=2等が当たる確率)としましょう.すると上の式から7枚以上買わないときは上の議論が適用できることがわかります.
結論
期待値を「期待」するのは危険だよ!!
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