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2017年3月9日木曜日

新通貨システムの模索 〜平等な世界を目指して〜

ようやく本題へ。

今回の目標は、今の通貨システムに変わる新たな通貨システムをつくり、貧富の差が勝手には生まれないような社会をつくることです。

新通貨システムの設計

前々回の投稿で価値関数を導入しました。この価値関数によって、お金の額面とその価値を別々のものだと捉えられるようになりました。今回はこの価値関数を基準に通貨システムを設計しなおすことにします。時間の項が絡むと複雑になるので、今回は省略します。

額面と資産

その前に単語をふたつ定義しておきましょう。額面と資産です。

額面はものの値段を表すものとし、これの単位をKachiと定義します。たとえば、このりんごの値段は0.1 Kachiである、というふうに用います。

一方資産はその人が持つ資産のこととし、これの単位をeKachiと定義します。給料などを思い浮かべてもらえばわかりやすいと思います。たとえば、私の年収は100 eKachiである、というふうに用います。

そして、これらは価値関数を用いて$y=f(x)$と変換できます。$x$は額面、$y$は資産です。

価値関数の設計

価値関数を「資産が自然とバラけるように」設計しましょう。

$\alpha, \beta >0$とし、価値関数の逆関数を$g=f^{-1}$と定義します。このとき、資産$\alpha + \beta$を額面に変換すると
$$g(\alpha + \beta)$$
となります。もしもこの資産を分割したあとに額面に変換すると、額面の合計は
$$g(\alpha) + g(\beta)$$
となります。「資産が自然とバラけるようになる」というのを、「資産を分割したほうが額面の合計は多くなる」と言い換えてあげれば、不等式として以下のように表現できます。
$$g(\alpha  + \beta) < g(\alpha) + g(\beta)$$
実は、
$$g(y)=\log (1+y)$$
は上の不等式を満たします。確認してみましょう。
$$g(\alpha  + \beta) - g(\alpha) - g(\beta)$$
$$=\log\frac{1+\alpha+\beta}{(1+\alpha)(1+\beta)}$$
$$=\log\left(1-\frac{\alpha\beta}{(1+\alpha)(1+\beta)}\right)$$
$$<\log 1=0$$

$g=f^{-1}$だったので、価値関数$f$は
$$f(x)=g^{-1}(x)=e^x -1$$
となります。

同じ人の中で資産を分割されても意味がないので、ひとりひとつだけウォレットを持ち、その中ですべての資産を管理するとします。

まとめ

今回は新通貨システムの原型を提示しました。やったことはただひとつ、
価値関数を$f(x)=e^x-1$に変更
しただけです。これにより自然と資産が分散していくことが期待できます。

まだまだ考えるべき課題があることは承知していますが、ぼくの目指す「新しい通貨システム」のイメージを伝えることだけは少なくともできたかなと思っています。

抽象的な議論が続いたので、具体例を考えて理解を深めましょう。

例えば、Aさんの資産が10 eKachi、Bさんの資産が1 eKachiの状況を考えます。この資産を関数$g=f^{-1}$を用いて額面に変換すると、それぞれの資産に対応する額面は、$\log(1+10)=2.40$Kachi、$\log(1+1)=0.69$Kachi、となり、二人の合計額は3.09 Kachiとなります。

ここで、AさんがBさんに2 eKachiあげたとします。このときAさんとBさんの資産はそれぞれ8 eKachiと3 eKachiになるので、これに対応する額面は、$\log(1+8)=2.20$Kachi、$\log(1+3)=1.39$Kachi、となり、二人の合計額は3.59 Kachiとなります。

これらふたつの状況を見比べると、二人の合計資産は変わらないのにもかかわらず、二人の合計額面は増えていることが確認できます。これは後者のほうが前者よりも「平等」だからです。

発展的内容:囚人のジレンマ

流通する額面の量が増えたら(本来の意味での)価値がさがるので意味がないのではないかと思ったそこのあなた!いいセンスをしてます。この疑問に対して「囚人のジレンマ」的議論で答えます。

大富豪のAさんBさんがいるとしましょう。ここでBさんだけが自分の資産の一部を平民に分け与えたとします。

もちろんタダであげるのではなく、見返りとして平民から労働力などを提供してもらいます。このとき大富豪と平民の間に格差があればあるほど、少ない資産で多くの額面を与えることができるので、1資産あたりに平民から得られる見返りは多くなります。

このときAさんのもつ通貨の価値はどうなるでしょう。Bさんが資産を分割したことで市場に出回る額面が多くなります。よってAさんの持つ通貨の価値は相対的に下がってしまいます。

よってAさんは、平民が貧乏なうちにBさんよりもはやく資産を分割したいと考えます。もちろんBさんも逆のことを考えるので、囚人のジレンマとおなじように(大富豪からみたら望まない結果である)平等な世界に落ち着くのです。

ぼやき

この新通貨システムにより、お金は物理的束縛から開放され、形而下のものから形而上のものへと昇華するのである。。。

2017年3月6日月曜日

お金の持つ欠点

ブログの更新サボっててすみませんでした。

前回に引き続き今回もお金の話です。予告通りお金の持つ欠点を考えてみたいと思っています。前回の投稿の内容を前提に書くので、まだ読んでいない方がいればぜひ読んでください。

金利


本題に入る前に質問です。金利というシステムはなぜ成り立つのでしょうか?つまり、なぜお金を預けているだけなのに金利がつくのでしょうか。

様々な答えが考えられますが、私の答えは「お金でお金を生む機械を買えるから」です。(この答えは、言葉通りの意味以外にも人を雇うことなど広い意味を含んでいます。)たとえば100円の原材料で200円の製品を作り出す機械を考えてもらうのが一番わかり易いと思います。つまり、お金があればさらにお金を増やせる機会を得ることができるので、金利を払ってでもお金を借りたいと思う人が一定数いて、金利制度が成り立つわけです。

ここまでくると、察しの良い読者の方には私の考える「お金の持つ欠点」が
なにか分かり始めてきたでしょう。そうです、「お金の持つ欠点」は、貧富の差が勝手に拡大する点です。

しかし、前回の投稿をしっかり理解している読者さんの中には論理の穴に気づかれた方もいるかもしれません。気づけなかった人は価値関数について一緒に復習しましょう。

価値関数というものは額面と時間を引数とする関数で、そのお金の持つ本当の価値をもとめる関数$f(x,t)$でした。前回の投稿での議論から、同じ額面をもつ紙幣でも、時間が経つにつれて価値が指数関数的に減少することをしめしました。

ここまでくれば多くの方が論理の穴に気づかれたことでしょう。つまり、金利分による額面増加分は価値関数ですでに考慮されており相殺されるのではないか、ということです。

この指摘に反論するために重要となるキーワードは「シャープレシオ」です。

シャープレシオ


シャープレシオは次の式で表されます。
$$\frac{\text{期待リターン}-\text{リスク無しリターン}}{\text{リスク}}$$
つまりシャープレシオは「1リスクに相当するリターン」です。ファイナンス理論を学んだことのない人からするとリターンが大きければ大きいほどよいと考えてしまいがちですが、実際の投資家はリターンよりこのシャープレシオを基準に投資先を決めます。

シャープレシオが重要視されるのは、リスク回避的な投資家が多いからです。銀行がわかりやすい例です。銀行は口座に預けられたお金を運用して利益をあげていますが、口座内のお金を減らすわけにはいきません。なので、高リターンの投資案件でも、元本割れのリスクが高いものには手を付けないのです。

お金の持つ欠点:貧富の差が拡大すること


シャープレシオの話の裏を返せば、リスクを取れば取るほどより良いリターンを期待できます。なので大富豪のように自由に使えるお金が多ければ多いほど有利であり、金利分の価値減少分を考慮してもなお、指数関数的に価値は増加していくのです。一方、生活費だけで精一杯のひとは、リスクの高い投資をすることができないので価値は増えていきません。こうして貧富の差は拡大していくのです。

まとめ

リスクをとれる大富豪は資産が勝手に増えてゆく一方、リスクを取れない人は資産を増やすことができない。ゆえに貧富の差は拡大していく。

もちろん税金などを活用することで貧富の差を縮小させる試みは行われていますが、お金の持つ欠点の抜本的な解決策とは言えません。次回はこの問題を通貨システムそのものを変えることで解決することを試みます。