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2016年12月18日日曜日

年末ジャンボの考察(2) 〜期待値の3分の2しか「期待」できない?〜

コインゲームの考察 〜偏った賞金〜

前回の記事で扱ったコインゲームについて考察してみましょう.なぜ無限大だったはずの賞金が有限という制約を加えただけでたったの16円になってしまったのでしょうか.

まず賞金が10億円に達することなく支払われる確率を求めましょう.すると
\[
\sum_{n=1}^{30}2^{-n}=1-2^{-30}=1-1/10\text{億}
\]
となります.つまり起こりうる全事象のうちたった10億分の1を除いてしまうだけで無限大が16円になってしますのです.もっとわかりやすく言えば,ほぼ起こり得ない事象が期待値のほとんどの部分を占めているということになります.

宝くじの「期待」値 〜現実的な数値を求めて〜


では前置きはこれくらいにして本題の年末ジャンボについて考察していきます.

勘の鋭い読者の皆さんならお気づきかもしれませんが,宝くじはこのコインゲームと非常に似た性質を持っています.それは「ほとんど起きない事象に莫大な賞金が掛けられている」ということです.

そこで宝くじの「期待」値を求めるのにコインゲームで使ったトリック「有限の制約」を加えてみましょう.ただ,宝くじの場合はすでに有限なので,「賞金が最ももらえる事象と最ももらえない事象の上位をごく僅か除いて期待値を計算する」ことで対応します.

宝くじの(理論上の)期待値は販売額の約半分になります.実際に今年の年末ジャンボの期待値を計算すると149.975円になります.これは当せん金付証票法という法律で,期待値は半分以下でなければいけないと定められているかららしいです.

宝くじを1枚買う場合の「期待」値

今年の年末ジャンボの1等は賞金額が7億円で当たる確率は0.2億分の1で,前後賞は賞金額1.5億円で当たる確率は0.1億分の1です.1等と前後賞が当たる確率は皆無に近いので,「有限の制約」から除外します.1等と前後賞で得られる賞金が占める期待値は
\[
7/0.2+1.5/0.1=50
\]
となります.全体の期待値150円のうちおよそ3分の1が1等と前後賞によるものだということです.この結果から次のような結論を得ます.

年末ジャンボの期待値は150円だが,実質的には100円しか「期待」できない

(おまけ)宝くじを(ランダムに)複数枚買う場合

では複数枚買った時は上の議論が適用できるのでしょうか.その答えは「買う枚数」と「除外する事象の割合」によります.今回は「除外する事象の割合」を定数$p$として,買う枚数$n$が何枚の時まで上の議論が適用できるか考えてみます.

宝くじを1枚買う時,1等または前後賞が当たる確率$p_0$は
\[
p_0=1/(0.2 \text{億})+1/(0.1 \text{億})=15/(1\text{億})\simeq 1/(667\text{万})
\]
となります.上の議論が適用されるのは1等または前後賞が1回でも当たる確率が$p$以下になる時です.数式で表すと,$p_0\ll 1$であることから
\[
p>1-(1-p_0)^n\simeq 1-(1-np_0)=np_0
\]
となります.ここで「除外する事象の割合」を100万分の1(=2等が当たる確率)としましょう.すると上の式から7枚以上買わないときは上の議論が適用できることがわかります.

結論

期待値を「期待」するのは危険だよ!!


2016年12月17日土曜日

年末ジャンボの考察(1) 〜期待値は本当に「期待」できる?〜

今年も残りわずかということで,今回は年末ジャンボについて考察します.


期待値はなぜ「期待」できるのか

期待値は本当に「期待」できる値なのかどうか考えたことはあるでしょうか.

例えば同じ値段の2種類の宝くじA,Bがあるとします.宝くじAは2分の1の確率で200円当たります.宝くじBは2,000分の1の確率で202,000円当たります.仮に宝くじは人生で1枚しか買わないことに決めていたとしましょう.

宝くじA,Bの期待値はそれぞれ,100円,101円なので,期待値だけ考えれば宝くじBを買う方が有利です.それでは本当に宝くじBを買うべきなのでしょうか.

直感的には1枚しか買わないならば宝くじBはまず当たらないので,宝くじAを買う方が有利な気もします.この疑問に対して.私の友人はこのように回答しました.

「仮に宝くじは人生で1回しか買わないかもしれないけど,人生で同じような選択をする場面は何回もある.それらをひっくるめて考えれば,毎回の選択で期待値の高い方を選択することは理にかなっている.」

見事な回答です.確かに重要なのは宝くじで得られる金額ではなく,人生全体で得られる金額です.視野を人生全体まで広げれば選択回数は十分多くなるので,期待値が高い方を選び続ければ人生全体で見れば得します.これは数学的に大数の法則から言えることです.

期待値無限大のコインゲーム 〜有限という縛り〜


ただ少し待ってください.本当に人生全体での選択回数は「十分に多い」のでしょうか.このことに関して(本質的には少しずれますが)面白いパラドックスが知られています.(サンクトペテルブルクのパラドックスと呼ばれているらしいです.)

ゲーム内容:コインを投げた時,連続で表が出た回数に応じて$2^n$円を賞金とする.(最初に裏が出たら1円.)

このゲームの期待値は
\[
\sum_{n=1}^{\infty} 2^{-n}\cdot 2^{n-1} = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{1}{2}=\infty
\]
となります.しかし現実世界には制限があります.それはお金の量は有限であるということです.例えば賞金は10億円しか用意できなく,賞金額がそれ以上になった場合はゲームをやめてその時点での金額を支払うことにします.このとき
\[
10\text{億}=10^9=1000^3\simeq (2^{10})^3=2^{30}
\]
ということを利用すると,期待値は
\[
\sum_{n=1}^{30} 2^{-n}\cdot 2^{n-1}+\sum_{n=31}^{\infty} 2^{-n}\cdot 2^{30}=15+1=16
\]
となります.つまり無限大だったはずの期待値がたったの16円になってしまいました.このように有限という制限は強力なのです.


(年末ジャンボの考察(2)に続く)

2016年12月11日日曜日

Google 製品から考える将来のPC像

おはようございます!
記念すべき初回の投稿は「Google 製品から考える将来のPC像」というテーマで書きたいと思います.

今回注目する製品は Google Glass と Chromebook です.

「なんで流行らなかった製品に注目するの?」という声が聞こえてきそうですが,これにはちゃんと訳があります.

Google は一流企業なのは疑いの余地がないでしょう.
なので、なんの計画もなしに製品を出しているとは考えられません.
つまり、Google は「流行る」と確信して出したが、結果として流行らなかった、ということになります.

流行らなかった理由として私は「世の中がまだ追いついてきてなかった」からだと考えます.(ここで Google 信者であることがバレ始める)
裏を返せば、流行らなかった製品について考察すれば、近い未来どのような製品が流行るのかがわかるということになります.


Chromebook: 「主な処理はクラウドで」

ChromebookはGoogleが独自に開発したパソコンで,OSもWindowsでもmacOSでもない独自のものです.「流行らなかった」と書きましたが,欧米の方ではある程度流通しているらしいです.

Chromebookの特徴はその軽量さです.基本的にすべてのことをChrome上のみで行うため,起動時に余計なアプリケーションが立ち上がらず,高速起動します.また,Chromebookはインターネット接続を前提にしており,データの管理等はクラウド上で行うため,コンピュータのスペックはそれほど必要なく,その分安価です.

つまり,Chromebookは入出力以外の部分のほとんどをクラウド上でこなすことで,無駄のない作りになっていると言えます.

Google Glass: 「究極のディスプレイ」

Google Glassは画像を見ても分かる通り,メガネに小型ディスプレイを搭載することで,目の前に仮想的なディスプレイを作れるものです.今流行りのVR(Virtual Reality)と似ていますが,これはAR(Argumented Reality: 拡張現実)に属します.

ところで皆さんが普段使っているディスプレイはどのようなものでしょうか?身近なものですとスマホやテレビが挙げられます.中にはタブレットやスマートウォッチを持っている人もいるかもしれません.これらのディスプレイの大きな違いは「サイズ」です.

例えばスマホであれば,持ち運びやすいように手に収まるサイズである必要があり,テレビであれば,大迫力の映像を楽しむために大きなサイズである必要があります.つまり,我々は周りの環境に合わせて最適なディスプレイのサイズを選び,それに応じたデバイスを使っていると理解することができます.

ではもしあなたがGoogle Glass(の進化型)を持っていたらどうでしょうか.仮想的なディスプレイは物理的な制約を受けないので,あらゆる場所でお好みのサイズのディスプレイを手にすることができます.例えば電車内では,従来のように首を屈めて小さいスマホのディスプレイを見る必要はなく,楽な姿勢で大画面の映像を楽しむことができます.

いわば,Google Glassは「イヤホンの視覚バージョン」なのです.


私の考える将来のPC像:Google Glass型Chromebook

ここまでの議論を踏まえ,私は将来のPC像が「Google Glass型Chromebook」のようなものになると考えます.すなわち,物理的に手元に置いておかなければいけないものは入出力インターフェースのみで,他の部分はすべてクラウド上で処理してしまう,という考えです.(入力インターフェースがないじゃないかと思った方,その通りです.私は未だに最適な入力インターフェースを見つけ出せていません...)

いつか,スマートウォッチからPCまでこのデバイスに置き換わり,シンプルでスマートな世界になってくれることを願っています.